滋慶学園 国際顧問 伊豆原 直子先生 特別講義
「Catch The Dream World〜夢を追って〜」

世界各国のディズニー・テーマパークで、アートディレクターとして活躍され、数々のコンセプト、ショウ、プロダクションデザインを手がけられた、伊豆原直子先生が、昨年に引き続き来日。
「Catch The Dream World〜夢を追って〜」と題された特別講義は、10月16日の名古屋校から始まり、仙台、福岡、大阪、東京校で、クリエーターを目指す学生たちを大いに刺激し、夢に向かって努力することの素晴らしさを伝えてくださいました。
夢を追ってアメリカヘ
伊豆原先生は東京学芸大学ご卒業後、上野女子短大で教鞭を取りながら制作活動も行っておられましたが、「もっとクリエイティブなものを見つけて創りたい!」と単身渡米されました。
コンペがあれば出品され、ついには 『Rising sun in the Ocean』という染色作品がディズニーの展覧会で受賞、そのままウォルトディズニー・イマジニアリング(以下WDI)にスカウトされることとなります。この時「ゾウは描く事ができるか?」という話から仕事がスタートしたそうです。ゾウの絵を描くとばかり思っていた伊豆原先生は、実際の仕事が、ゾウのオーディオ・アニマトロニクス・フィギュアのペイントとわかって、たいそう驚かれたと当時を振り返られていました。
世界中のクリエーターとの仕事

WDIでの仕事はアートディレクター。デザイナー、アーティスト、エンジニア、照明、オーディオ、スペシャルエフェクト、クラフトマン、カーペンター、コスチューマー、コスメトロジストに作品のコンセプトデザインを伝え、出来たものをチェックし、完成させます。デザインを創りだすだけでなく、チームとのコミュニケーションと、芸術的な決断力が要求される重要なポジションです。パリのディズニーランドでは、アイルランド、イタリア、フランス、イギリス、ポルトガル、ドイツ、アメリカなど約200人のチームが集まって制作するので、もちろん共通語は英語。英語圏の中でも、アクセントがある英語は意思の疎通が難しく、ゲストが楽しむものや感動するものを創るために、「私の英語を理解して、ひとりひとりが最高の才能を発揮して欲しい!」と、チーム・メンバーを奮起させることも大切な仕事でした。アートディレクターというのは、常にチーム一人一人のコンディションをよく見て把握しておかなければならず、どこがどうNGなのか、どのようにすればもっと良く見えるのかを、正確にディレクションしなければならない。
イマジニアリングは、テーマパークのコンセプトとプロダクションをクリエイトする組織です。学生時代に、絵画だけでなく彫刻、木工、金工、染色、デザイン・・・いろいろなことを何でも学んだことが仕事に役に立ちました。と当時を振り返って語られていました。
クリエーターにとって必要なものとは?
数々の作品を制作し、様々なアーティストと仕事をされてきた伊豆原先生ですが、WDIでは本当に多くの経験をされたそうです。
新しいパークのオープン数ヶ月前は早朝・深夜での作業が続き、家に帰って2・3時間休み、また仕事にいくハードワークをされていたこと、アトラクションの中をクオリティチェックしている際に、誤って水路の中に落ちてしまったこと、ゲストや外部団体からの要請で、「イッツ・ア・スモール・ワールド」や「カリブの海賊」のコンセプトを変更したりと、現場ならではの苦労話には、学生達からも笑い声が聞こえていました。
伊豆原先生が一番印象に残っているのは、オープニング間近に「カントリーベア・ジャンボリー」で「ゲストをアッと興奮させるディテールがなければ」と、ナイン・オールドマンの一人でディズニー・テーマパークの開発の推進力となった偉大なアニメーターのマーク・デイビス氏からアート・ディレクションを受け、アーネストと言うベアーの歯を1本だけ金歯にしたことだそうです。1番苦しかった仕事はディズニーで働き始めた頃、4メートルのお化けズッキーニ(キュウリに形の似た西洋のカボチャ)を彫刻した時です。期日が迫り週6日間1日12時間のスケジュールで体は痛みもうこの仕事は続かないと悩んだこともありました。あの時、辞めていたら、今の自分はないと、その時の重装備の写真を見せてくださいました。これまでも、何度もくじけそうになった時に、この時のことを思い出して、自分自身を奮い立たせていたそうです。
先生の多彩なエピソードからは、劇場映画からキャラクター商品、テーマパークまで、あらゆる分野で圧倒的な人気を誇るディズニーのクリエイティビティの秘密を垣間見ることができました。
走り続けるクリエーター
現在は、フロリダ州のウインターパークで、アート制作に専念されている伊豆原先生ですが、近況を、ご自身で撮影された写真のスライドを使ってお話いただきました。自然を見回し、生活の中からもデザインの要素を取り入れた、あらゆるものに興味を持つことが、アートへの意欲へとつながって行くのです。最近参加された、SATE(ストーリー・テリング、アーキテクチャー、テクノロジー、エレクトロニクス)という国際会議の様子と、世界トップクラスのクリエイターの集団を紹介してくださいました。テクノロジーに支えられた21世紀の建築物は非常に美しく限度がなく興味があるそうです。20世紀の建築物の紹介があり、目覚ましい発展をみせている中東諸国や仙台メディアテークと関西空港、また、今年、開催された、北京五輪の裏話をきくこともできました。
最後に、「自分にしかできないことがある。今の段階は勉強だから、好きなアーティストを選んでいろいろ模倣すること、技術を頂くことも大切ですが、最終的には、自分から新しいものを創り出していく力が必要です。目を養い、遊び心を持って、自分の夢をつかみ取って下さい。」とクリエーターとして、人生の先輩として、伊豆原先生の言葉が、会場に学生の心へ響き渡っていました。

岐阜県出身。東京学芸大学美術科と同大学美術専攻科卒業。
1980年代初頭に渡米しファインアーティスト、イラストレーターとして活動。その後、ウォルトディズニー・イマジニアリングにスカウトされ、アートディレクターとして東京ディズニーランドやディズニーランドパリの立ち上げに参加。また中心的なトップアートディレクターとして世界各国のアートディレクター、アーティストの指導に尽力する。06年にはユニバーサルスタジオジャパンのクリスマスイベントのアートディレクションを手掛ける。また自身の個展やグループ展を各地で開催する。現在フロリダ州在住。アート関連の書籍執筆や作品制作に専念。当滋慶学園国際顧問。



