CREATIVE TALK「とにかく描き続ける。 より魅力あるマンガを目指して。 それがプロの姿勢です。」

週刊少年マガジン副編集長
米村昌幸氏 ×
鞍井 修一学校長
創刊50周年を迎え、根強いファンに支えられ続ける『週刊少年マガジン』(講談社)。副編集長の米村昌幸氏は、これまで何度も本校の作品添削会にご協力いただき、また在学生の新人デビューを担当していただいたこともあります。なごやかな雰囲気の中、マンガ家を目指す楽しさや大変さについて話をうかがいました。
一人の作者が練り上げる世界観がマンガの魅力
【鞍井】最近は、映画やドラマの原作にマンガが非常に多く使われていますね。小説が原作のものより、マンガが原作のものの方が多いのではないでしょうか。しかもその質が高い。マンガには、広く受け入れられる普遍的な価値があるように思うのですが、米村さんはいかがですか?
【米村】マンガは、映画やドラマに比べて個人作業の産物ですよね。物語をつくることも、その絵を描くことも基本的には一人のマンガ家に任されています。そうした閉じた世界の中で練り上げられたものだけに、作者の個性が前面に出ていて、いい意味でとがっている。その「とがった部分」こそが世に出たときに多くの人を惹きつけるんじゃないでしょうか。
【鞍井】それは全く同感ですね。私は元々広告制作の仕事をしていましたが、その業界では1本の15秒CMを作るまでに最低100職種のスタッフが関わります。大勢に磨かれたものはそれはそれで素晴らしいのですが、一個人の想像から生み出されるマンガの濃い世界はまた別物でしょう。
【米村】最近デビューを目指す若手の方には、「原作をやりたい」「イラストを専門にしたい」など、分業を前提に進む方向を考える人も多くいるんです。でも僕は、マンガのストーリーと絵、キャラクターは切り離しては考えられないものだと思っています。いい話だからおもしろい絵場面ができ、味のある人物が出てくるからストーリーにも読み応えを感じられるものでしょう。昔よりイラストの技量や凝ったストーリー展開が求められる今、「分業しないと大変!」という声も理解できますが、まずはできるところまで一人でやってみてはどうでしょうか。将来、分業するときにもその経験はきっと役立つと思いますよ。
自分で納得できるものを描き続ける熱意が大切

【鞍井】少し本校の話をさせていただくと、本校はデビューする学生の割合が高いのが自慢です(笑)。編集者としてご覧になったとき、本校のように専門学校で学んだ学生とそうでないマンガ家志望の人たちでは何が違うと思われますか?
【米村】そうですね…実際には、新人の発掘では作品さえおもしろければ経歴は気にしていません。ただ、良いマンガを描けるようになるには、最初はとにかくたくさん描くことが不可欠です。技術的に同じくらいでスタートラインに立つなら、熱意を持って描き続けられる人が必ず一歩も二歩も先に出ます。御校のデビュー率が高いというのは、学生さんや教える方々がそうした「熱心さ」を持っているということではないでしょうか。
【鞍井】それはマンガだけでなく他の業界でも言えることですね。私も学生によく話すことですが、「絶対に○○になってみせる」という本人の強い意志が本当に大切です。
【米村】ええ。デビューした後でも、週刊の連載なんかをしていると、何年にも渡って毎週二十数ページを描き続けなければいけません。これは途方もなく大変なことで、技術力を超えて、もはや体力勝負です。そんなハードな生活の中でも「今よりもっと読者が喜ぶものを」と高いレベルを目指し続けられる人が本当のプロなのではないでしょうか。
【鞍井】決まった期日の中で決まったページ数を描き上げるためにはスピードも重要になってきますね。本校にも良い作品をつくる学生は多いのですが、「高い品質のものを速く仕上げる」という点がやはりプロにはまだまだ及ばない点だなと感じます。
【米村】最初は時間がかかっても、自分で納得できる絵を描くことは大切です。描き続けるうちに無駄がなくなり、スピードは自然と上がってきます。そういう意味でも、たくさん描くことは大事だと思います。あとは実生活でもいろいろな世界を知ることでしょうか。ラーメン屋のシーンをひとつ描くにしても、ただ想像だけで描き上げるのと、実際にラーメン屋に行って店を観察したり、親父さんと話してみたりして描くのでは全然深みが違います。手間を惜しまず、自分が満足できるものを描いて欲しいですね。
デビューは始まりさらに高いステージへ
【鞍井】新人には、デビューが最終目標になってしまっている人も多いように感じています。でも、米村さんもおっしゃったように、本当に大変なのはその先もずっと描き続けていくことなのでしょう。デビュー作の1本で終わってしまう人も少なくありませんが、2作目が出せる人との違いはどこにあると思われますか?
【米村】デビューして作品が誌面に載ると、当然読者からはさまざまな反応が返ってきますよね。読者アンケートによる人気投票や感想など、最初はけっこう厳しい評価だったりもすると思います。それらをきちんと受け止めて、次に活かせるかどうかが2作目を出せるかどうかの境目かもしれません。
【鞍井】最後に、プロを目指す学生や高校生にアドバイスをいだだけますか?
【米村】とにかくたくさん描いてください(笑)。本当にそれに尽きます。あと、新人さんからよく聞く悩みとして「自分が描きたいものを描くべきか、人にウケそうなものを描くべきか迷う」という声がありますが、そんな時は自分と誰かもう一人――友達でも、家族でも、恋人でも――その最低二人が喜べるものを描くことをオススメします。そうすれば、背伸びしすぎずに世界を広げられると思いますよ。
【鞍井】なるほど。今日のお話は、マンガに限らずクリエーティブ業界の全ての職種に通じるもの。本当にありがとうございました。また学校でお待ちしています。

週刊少年マガジン編集部副編集長。1995年、株式会社講談社に入社後、週刊少年マガジン編集部に配属。以来、14年にわたって編集者として活躍する一方、多くの新人発掘にも携わる。

(本校 学校長)
本校学校長。株式会社電通関西支社クリエーティブ局元局長。マンダム、ハウス食品、ダスキン、NTT docomo関西、サントリーなど、多くのクライアントを担当し、ヒットCMを制作。数々の広告賞を受賞。



